「ONLY PLACE WE CAN CRY」(単行本)
- 1991.1.25 角川書店
- 「月刊カドカワ」で連載していたものを含む、モノクロの写真と短い文章と詩。
ちょっとせつない、非常に好きな本です。
「人と人同士というものは ある時のある瞬間に なにげない ありふれた
けれどその二人にとっては重要な いくつかの会話を交わすものだ
その会話によってその二人が お互いみつけがたい ある特別な者同士ということが
ハッとわかるような 非常に 他からみるとありふれた
とるにたりない ひとつの 会話ではあるが」
あとがき
私は、子供の時よりも、大人になった今の方が、とても自由になった気がします。10年前より5年前の方が、去年より今年の方が、おとといよりきのうの方が。それは、なぜかというと、すこしずつ世の中のいろいろなことや人のこころや自分のことを知っていくにつれて、すこしずつ何かがわかってきたからです。つじつまがあってきたからです。なんとなくしかわからなかったことが、ああ、そうかと、はっとわかったりして、そうすると心の範囲が広くなった気がします。いいことばかりでなく悪いことでも、そのままにしておくと、何年もたって、理解できて、消えていったりします。自分の考え方や行動そのものが、形を変えて結局自分にかえってくると思うと、おもしろいような気にもなります。だから、これから先のこともたのしみです。先のことがわからないって、本当におもしろいことだと思います。たいへんなことがおこった、という状況の時、私はいちばん力強く、わくわくします。
トンネルの中をすすんでいるような日々ですが、このトンネルが好きなので、ずっとずっと本を作って、最後までトンネルの中だとしても、このまま深くコツコツとすすんでいきたいです。ひとり用のせまいトンネルだけど、目的の方向がわかっているから、日々たゆまなく、今、こうしている時も、すすんでいるような気がしています。このトンネルは暗くはないです。ちゃんと日が射すし、風も吹いて、友だちもいて、愛する人もいます。テレビも旅行もマンガもよめるトンネルなので、ほりつづけます。これが私の仕事だと思うのです。
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